idea factory from newspaper 2003 8 10

総合商社(general merchant)
 もう何年前の話になるのでしょうか。
総合商社不要論というものがありました。
こういう議論が、盛んに主張された時代があったのです。
また、これからはハイテクの時代である。
だから、鉄鋼やプラント関係の部門は、切り捨てるべきだという主張も多かったのです。
 私は、これには、反対で、
総合商社は必要で、
いくらハイテク分野がいいからと言っても、
鉄鋼やプラント関係の部門は、縮小する必要はあるかもしれないが、
将来のことを考えて残すべきであると考えていました。
種は捨てるべきではなく、取っておくものです。
 総合商社の長い歴史を見てみると、
Aという部門が好況で、Bという部門が不況、
しかし、時代が変ると、
今度は逆に、
Aという部門が不況で、Bという部門が好況、
こんな歴史だったのです。
 だからこそ、歴史を振り返れば、
総合商社不要論はおかしいし、
ましてや、不況部門を切り捨ててしまうのは、おかしいと考えていました。
 昔の農民は、どんなに不作で、食べ物に困って、飢えても、
来年に蒔く種は、食べなかったそうです。
 外国によく行く知人から聞いた話ですが、外国には、総合商社というものがないそうです。
外国で総合商社をやっても、うまく経営ができずに、つぶれるそうです。
日本人の才能でしょうか。
 ところで、総合商社を別の用途でも利用できたはずです。
日本には、アメリカのCIAのような情報省はありません。
また、日本の外務省は、情報収集能力が、米英に比べて低いのです。
しかし、総合商社の情報収集能力は高い。
ビジネスになれば、世界各地の隅々まで展開します。
だから、総合商社をうまく仕立てて、情報収集機関にすればよかったのです。
これなら、税金を使わず、情報収集機関を作れます。
 思うに、今回の不景気で、
社員を大量にクビにした企業は、また負けると思います。
日本が好景気になった時に、また負けます。
好景気になった時に、需要は増えたが、
技術者が不足、営業マンが不足、経験者が不足と嘆くことになるでしょう。
社員を大量にクビにする前に、社員教育の貧困を議論すべきでした。
社員教育の貧困を棚に上げて、とりあえず、
社員をクビにすれば、経営改善すると考えたのは安易でした。
これでは、日本が好景気になった時に、また負けます。
 銀行について、このサイトでは、多くのことを書いてきました。
しかし、事業への提案はあっても、
不良債権をなくせとか、不良債権処理を急げとかは、一度も言っていないはずです。
不良債権処理は急ぐべきだったことは、間違いないのですが、
今となっては、やっても、やらなくても、大勢に影響ないところまできてしまったのです。
 熟成して良いのはウィスキーだけで、
不良債権を熟成しても意味がないのです。
ワインの栓を抜いたら、早く飲まないとダメです。
不良債権の栓は、とっくの昔に抜いているでしょう。
 もう今となっては、不良債権処理は、後ろ向きの事業です。
儲かる事業にエネルギーをそそぐべきです。
 種は捨てるべきではなく、取っておくものです。
昔の農民は、どんなに不作で、食べ物に困って、飢えても、
来年に蒔く種は、食べなかったそうです。